春はいつでも陰鬱とした空気を孕んでいる。
春。春といえば、通っていた高校の通学路に咲いていた桜を思い出す。あの桜を4年間毎年同じ時期に見ていたのだから、忘れるわけがない。
思い出は幾らか誇張して記憶に残るものだとしても、あの桜は充分に美しかった。

皆より少し遅れて登校したときの、誰もいない校舎前…自転車で春の清涼な風を切り、校門前にいつも立っている先生に、今日も叱られるんだろうなあ、と思いながら、それでも足元にピンクの水溜りができていると見惚れずにはいられなかった。
美しい景色は人を浮かれさせる。小鳥の声を聞いて、桜たちも楽しげだったような気がする。

部活から帰るときにはもう夕焼けで空がオレンジ色になっている頃だったので、桜の柔らかい色彩は霞んでしまい、印象にもあまり残っていない。やはりあの、青空の下の桜が良い。ほのぼのとして澄んだ空気が映える、そして少し陰鬱な春。


清少納言の真似事をしてしまいました。そろそろ寝ようと思います。これから秋が来ますが、私は秋も好きなので楽しみです。とりあえず、エレベーターの中に先客がひっそりと忍び込んでいるというようなドッキリイベントは起こらないと思いますので…