狐憑き

私は私を制御できない。いつも大好きな人たちを傷つけてしまう。私が一番望んでいることは、私の大好きな人たちが幸せでいること。でもその幸せを崩壊させるのはいつも自分だ。こんな自分はいつになっても好きになれないだろうし、そのせいでいつまでも幸せにはなれないだろうし、そのせいでいつまでも私の愛する人々が幸せになることはないだろう。

この間、恋人と大喧嘩をした。原因は私の情緒不安定だった。奇怪なこころの動きが憑依した私の身体は、恋人をまたも傷つけた。

仲直りして何時間か経った後、喧嘩した時は心の底から憎かった恋人が寝ている姿を見て、心から申し訳ない気持ちになり、傍に寄り添った。
エアコンから流れる空気にのって鼻腔に届く、柔軟剤の香りが染み付いた皮膚の匂い。それが一番感じられるように、肩の上に頭を乗せるのが好きだ。
美しく通った鼻筋に、彫刻のような神々しさを感じて、未だ故意に触れることができないでいる。中心に聳える鼻の横に二つ、はっきりと濃い睫毛を並べた一重瞼が、安らかに閉じられている。上唇はは果実をついばむ小鳥のようにちょこんと、可愛らしく突出しており、私はそれらを横から見るのが好きだった。

たまらなくなり、数えるくらいのキスをして、汗でしっとりした首に掌を添えた。顔への違和感で唸っていた恋人はすぐに寝息をたて始めた。
信用されているのだと感じた。同時に、こころの空洞が広がるのがわかった。






私、本当に好きな人のことしか殺したくない。自分の気持ちがわからないの。お腹の中で幾億のいのちを殺したとしても、満たされていない気がするの。でも、全員を救う方法が確かにあることはわかる。どうか厳正に裁かれますように。